Japan Association of Aerosol Science and Technology
[重要]PM2.5に関して頻繁に寄せられる質問


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I. PM2.5とは?
Q1. PM2.5とはそもそも何なのでしょうか?
A1. 空気中に浮かんでいる小さな粒子のことをエアロゾルと呼びます,そのうち,粒径2.5μm(マイクロメートル,ミクロンとも呼ぶ。2.5μmは2.5mmの1000分の1)以下の粒子をPM2.5(一般的にはPM2.5と書くことも多い)と呼び,その大きさから人間の肺の奥にまで到達しやすいとされています。ただ,PM2.5は最近急に発生したものでなく,太古の昔から一定量は地球上のどこの大気にも存在しています。また,自然起源のものと,人間の活動により発生するものがあり,自然起源のものについては原始時代から人類は呼吸してきたものです。 (工学院大学・並木,産業技術総合研究所・兼保)

Q2. PM2.5とはどんな物質ですか?
A2. A1でも記したようにPM2.5は粒径2.5μm以下の微粒子と言うだけで,その中身は何も規定されていません。その中には硫酸塩や硝酸塩の様な塩類,ディーゼル排煙中のススのような黒色炭素,数千種類にも及ぶ有機化合物(その中にはたばこの煙の成分や,発ガン性を指摘されているベンゾ[α]ピレンのような多環芳香族化合物など多種多様な物質が含まれます),金属成分など様々なものが含まれています。一般的にはPM2.5の主要な成分は硫酸塩や硝酸塩などの塩類と有機化合物です。(東京農工大学・畠山,埼玉県環境科学国際センター・長谷川)

Q3. PM2.5の濃度の単位はなんですか?
A3. PM2.5の濃度は一般に1 m3(立方メートル)の空気に含まれる粒子の重さで表されます。1μg/m3であれば1立方メートルの空気に100万分の1グラムの粒子が含まれることを表し,1 mg/m3であれば同様に1000分の1グラムの粒子が含まれることを表します。1μg/m3と0.001 mg/m3は同じ濃度を表します。(室蘭工業大学・藤本)

Q4. PM2.5の日本の環境基準はどのようになっていますか?
A4. 日本におけるPM2.5の環境基準は,2009年に環境省から告示されました。環境基準は,1年平均値が15μg/m3以下であり,かつ,1日平均値が35μg/m3以下であること,となっています。なお,大気環境基準とは,人の健康の保護及び生活環境の保全のうえで維持されることが望ましい基準として,大気をどの程度に保つことを目標に施策を実施していくのかという目標を定めたものです。(埼玉県環境科学国際センター・長谷川)

Q5. PM2.5はどのような装置で測るのですか?
A5. 2009年に「微小粒子状物質による大気の汚染に係る環境基準について」が環境省により公示されました。測定は,標準測定法となる,ろ過捕集による質量濃度測定方法,またはこの方法によって測定された質量濃度と等価な値が得られると認められる自動測定機を使用すると定められました。自動測定機には,ベータ線吸収法や,光散乱法とベータ線吸収法を組み合わせたハイブリッド方式等があります。これらの装置は多くの測定局に設置され,大気が常時観測されています。環境省やお住まいの都道府県・市町村等が測定した値がウェブサイト等で公表されていますので,そこから情報を得ることができます。ただし,公表されている1時間平均値は参考値とされています。なお最近では,簡易的にPM2.5濃度が計測できるハンディタイプの計測装置も市販されています。(室蘭工業大学・藤本,東京ダイレック・濱,埼玉県環境科学国際センター・長谷川)

Q6. PM2.5の化学成分はどのように測定しますか?
→A6. 一般的には,ろ過捕集による質量濃度測定と同様に,フィルタにPM2.5を捕集し,そのフィルタを直接または前処理して分析装置に導入して成分を測定します。こうした分析では,ある程度の成分量を集めなければ分析できませんので,一定のフィルタ捕集時間(たとえば24時間)が必要です。なお,先端的な研究では,フィルタに捕集せずにPM2.5の1個1個の粒子の成分を瞬間的に分析する方法もあります。(埼玉県環境科学国際センター・長谷川)

II. PM2.5の発生と輸送
Q7. PM2.5はどこから発生しているのでしょうか?
A7. 大気中のエアロゾルは,発生機構から一次粒子と二次生成粒子に分類されます。一次粒子は,発生源から直接大気中へ粒子として放出されるもので,工場やエンジン,焼却などから発生する燃焼粒子,また,自然界から飛散する粒子(花粉や火山灰)などがあります。二次生成粒子は,ガス状物質として大気中へ放出されたものが,放出後に化学変化を受けて粒子になったものです。光化学スモッグなどは分かりやすい代表例です。自然界から発生する粒子は一次粒子,二次生成粒子がほぼ同程度ですが,人間活動により発生する粒子は二次生成粒子の方が多いとされています。このうち,人間活動による一次粒子とすべての二次生成粒子はPM2.5の範囲にほぼ含まれています。そのため,PM2.5の対策においては,人間活動にともなう一次粒子を抑えることに加え,人間活動や自然界から放出されるガス成分についても注意する必要があります。 (埼玉大学・関口)

Q8. 大陸で発生したPM2.5はどのように日本に運ばれてくるのでしょうか?
A8. 冬には西高東低の気圧配置となって北西の季節風が吹くことから,大陸からいろいろなものが風に乗って運ばれてくるだろうとは誰しも考えることです。確かに冬の季節風により定常的に大気汚染物質が運ばれてくるので,日本海側の雪や蔵王の樹氷が酸性になったり,スス粒子を含んでいたりと言うことは理解できます。しかし,大陸の大気汚染物質が大規模に日本にやってくるのはむしろ移動性の高気圧や低気圧・前線などが日本の南岸を通過するときで,そのようなときに汚染物質が大規模に押し出され,または引っ張り出されてきます。テレビでよく紹介されるモデルシミュレーションの画像で,日本の上空に汚染物質がやってくる状況はこのような気象条件の時です。(東京農工大学・畠山)

Q9. 中国で発生したPM2.5は東京にも輸送されますか?
A9. PM2.5はどこでも発生しますので,東京で測定したPM2.5が中国から輸送されたものか近傍で発生したものかはすぐには分かりません。しかし,中国で発生したPM2.5が東京まで輸送される場合は,高度2000mよりも高く下層の影響を受けにくい自由対流圏を輸送されることが多いので,自由対流圏のPM2.5濃度を測定すれば予想ができます。自由対流圏のエアロゾルについてはリモートセンシングのライダーによる測定や,山岳部での測定・捕集分析が行われます。富士山は孤立峰のためその山頂は自由対流圏の観測に最適ですが,現在は夏期のみ観測が行われています。(東京理科大学・三浦)

Q10. PM2.5の高さ分布と輸送にはどんな関係がありますか?
A10. PM2.5を含むエアロゾル粒子やそのもととなるガス成分の発生源の多くは地表面近くに存在しています。放出された粒子状およびガス状の微量物質は,化学的変質を受けつつ,より広範な領域へと輸送・拡散されますが,一般的には対流が活発な大気境界層と呼ばれる地表から高度1〜2 kmの範囲が,エアロゾル粒子が多く存在する高度領域です。ただし,この高度範囲では雲や降水に取り込まれて大気から除去される頻度が高く,その平均の寿命は数日程度となるため,長距離まで輸送される頻度はそれほど高くありません。一方,大気境界層より上の自由対流圏では,地上からの影響を直接受けないため,通常は清浄な大気が保たれています。しかしながら,ひとたび低気圧に伴う上昇気流などの影響を受けて自由対流圏まで微量物質が持ち上げられると,大気からのエアロゾル粒子の除去が効率的に進まないことから,大陸を横断するような長距離輸送に発展する事例が多く観測されています。(京都大学・矢吹)

Q11. 観測されるPM2.5がどの地域で発生したPM2.5の影響を受けているか,またどのような種類の発生源の影響を受けているかわかりますか?
A11. PM2.5の発生源は,A4で述べられているように,人為起源(人間活動由来)と自然起源の両方がありますし,一次粒子や二次生成粒子など様々な発生源がありますので,寄与が大きい発生源地域や発生源の種類を特定することは非常に難しい問題です。ただ,PM2.5濃度の地域的な分布や高度分布,またそれらの時間変動の実測データや,気象条件を考慮した大気シミュレーションを合わせて解析することで寄与が大きい発生源の地域など大まかな方向を推測できます。(埼玉県環境科学国際センター・長谷川)

III. 北京の高濃度汚染
Q12. 北京で2013年1月に出現した非常に高い濃度のPM2.5が話題になっていますが,汚染物質の発生量が急に増えたのでしょうか?
A12. PM2.5の原因となる大気汚染物質の放出量が増えていることは確かですが,平成25年1月の北京での高い濃度出現の原因は,これに加えて,厳しい寒さが続き地面が低温になったことに伴う大気の“安定“(空気が上下方向に混合しにくくなる)状態が長い期間にわたって維持されたことが大きな要因です。さらに風の弱い状態も長く続いたため,地表近くで発生した汚染物質が比較的低い高度内に閉じこめられ,蓄積が続いたこともこれをさらに深刻にしたと考えられます。大気汚染物質の発生量が今年になって急に何倍・何十倍にも増えたというわけではありません。 (産業技術総合研究所・兼保)

Q13. 2013年1月の北京と同じような状況になったことは過去にもあったのでしょうか?
A13. 1952年のロンドンでは,12月に寒い日が続きました。そのため暖房用の石炭が大量に使われ,風も弱かったため,石炭燃焼から排出される二酸化硫黄ガスから生成する硫酸と煙とにより,いわゆる「ロンドンスモッグ」が非常に高い濃度でかかりました。このため約1週間に数千人もの人が亡くなるという事態になりました。当時はまだPM2.5という計り方をしていませんので,直接数値を比較することはできませんが,今回の北京はこれにさらに自動車からの排ガスも加わるという複合的な汚染状況だったと考えられます。(東京農工大学・畠山)

Q14. 北京での高い濃度のPM2.5に対応して,日本での濃度が増えているのでしょうか?
A14. 2013年1月31日に九州や西日本の一部でPM2.5の国内環境基準である,1日平均値35μg/m3を超過したことが大々的に報道され,不安を感じる人が増えているようです。しかし,福岡(福岡大学での測定値)でPM2.5濃度の1日平均値が35μg/m3を超過した日数は,ここ3年間の平均と同じです。超過日の1日平均濃度も,福岡での40μg /m3程度の値は,例年の1月の超過日のものと同程度でした。つまり,距離的に北京と最も近い国内の大都市である福岡では,1月に限っていえば例年並みであり,特に増えているとはいえません。また,1月31日のPM2.5濃度上昇の原因については,数値モデルの結果から,アジア大陸からある程度の濃度が運ばれて来たことが示唆されていますが,前日からの気象条件や大気汚染物質の濃度やそれらの比などから見て,国外からの移流分に加わる形で国内のそれぞれの都市で発生したPM2.5もかなりの程度寄与していたものと考えられます。(産業技術総合研究所・兼保)

IV. PM2.5の影響と対策
Q15. PM2.5を吸入することによりどのような病気になるおそれがあるのですか?
A15. PM2.5に対する短期的な高濃度暴露によって循環器系の疾患(不整脈など)とは因果関係があり,呼吸器系の疾患(ぜんそくなど)とも因果関係がある可能性が高いとされています。長期間の暴露によってはさらに小児や胎児の成長に影響を与える可能性があり,発ガン性,変異原性などを示す可能性もあります。(米国EPA,2009より)

Q16. PM2.5が付着した野菜や果物は食べても大丈夫でしょうか?
A16. PM2.5の主成分は硫酸塩や硝酸塩などの塩類です。これらは水に溶けやすい物質ですので,口に入れる前に水で洗えば除くことができます。PM2.5は空気とともに吸入すると肺にまで入ってしまい,呼吸器や循環器の病気を引き起こす可能性が指摘されていますが,食べ物を通して口から体内に入る場合には,量的にはきわめて少なく,また病原菌やウィルスのように体に入ってから増殖するようなものでもありませんので,心配する必要はありません。(東京農工大学・畠山)

Q17. マスクでPM2.5は捕れますか?
→A17. 一般にはいろいろなタイプのマスクが市販されていますから,正確には最大透過粒子径約0.1μm(最も捕れにくい粒子の大きさ)の捕集効率を測らないと何とも言えません。しかし,防塵用マスクとして市販されているものは,0.1μm程度の固体あるいは油滴試験粒子を用い,捕集効率は光散乱式濃度計(フォトメータ)で測る規格になっています。したがって,防塵マスクについてはメーカの公称値以上の捕集効率はPM2.5の粒子に対しても期待できます。(金沢大学・大谷,産業医科大学・明星)

Q18. 小さな粒子ほどマスクを通過し,捕れにくいのではないですか?
A18. マスクなどを構成するエアフィルタ(微細な繊維からなる層)は,様々な気流と粒子の運動の違い(捕集機構)を利用して粒子を捕るものです。粒子の捕集機構には,慣性,さえぎり,重力,ブラウン拡散があり,帯電した繊維では静電気力も働きます。これらの捕集機構の効き方は,フィルタを通る気流の速度,粒子の大きさ,フィルタ繊維の太さなどによって変化しますが,慣性,さえぎり・重力は粒子が大きいほどよく効き,逆にブラウン拡散は粒子が小さいほどよく効きます。したがって,これらの捕集機構がどれも有効に働かない,つまり最も捕れにくい粒子の大きさ(最大透過粒子径)が存在します。通常のフィルタでは,最大透過粒子径は0.1〜0.3μmです。このため,最大透過粒子径に対する捕集効率が分かっていれば,それより大きな粒子,あるいは小さな粒子に対する捕集効率は,それ以上の値を保証できることになります。粒子が小さいほど取れにくいと言う訳ではありません。(金沢大学・大谷,産業医科大学・明星)

Q19. 室内空気清浄機でPM2.5は捕れますか?
A19. マスクと同様,さまざまなタイプの空気清浄機が市販されているため,一概には言えませんが,市販の空気清浄器なら,0.1μmの粒子がどれだけ捕れるか性能を評価しているはずです。メーカに問い合わせ,0.1μmに対する捕集効率が分かれば,それ以上の捕集効率は保証できます。なお,一般換気用エアフィルタでは0.3〜5μmの部分捕集効率(粒径ごとの捕集効率)を測定する規格(JISB9908,この規格に電気集塵機の性能評価も含まれています)になっていますので,これにPM2.5の粒子径分布をかけて積分すれば,PM2.5の捕集効率が求まります。(金沢大学・大谷)

Q20. 今回のようなPM2.5汚染の抜本的な対策はないのでしょうか?
A20. 今回のPM2.5汚染の根本原因は,まだまだ多い石炭の使用(エネルギーの70%近くを石炭に頼っている)や増え続ける自動車(ガソリンの質が日本や欧米に比べて低い)からの排ガスです。まずは燃料の転換(よりクリーンな燃料の使用)を進めてもらう必要があります。しかし,日本が被害者,中国が加害者というような視点からではなく,第一に中国の国民が深刻な健康被害を受けていることを考え,まずこれを救済・軽減することを考えるべきです。「殺人スモッグ」や「殺人黄砂」が飛んでくるわけではありません。いたずらに煽るのではなく,隣国隣人の被害の軽減を図れば,その結果わが国に飛来するものも減るものと考えることができます。(東京農工大学・畠山)

Q21. 越境大気汚染問題を国際的に規制する京都議定書のようなものはありますか?
A21. 欧米では,長距離越境大気汚染条約などの国際的な枠組みのもと,PM2.5の原因物質でもある二酸化硫黄(SO2)や窒素酸化物(NOx)の排出量を規制する議定書が発行されています。アジアではこのような枠組みは今のところありませんが,日本や中国を含む東アジア13カ国が参加している東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)において,PM2.5等による大気汚染が顕在化していることを踏まえた今後の活動についての議論が行われています。(東京農工大学・松田)

V. 光化学スモッグや黄砂との関連
Q22. 光化学スモッグとPM2.5は関係あるのでしょうか?
A22. 光化学スモッグとは,自動車排ガスなどの燃焼により排出される窒素酸化物(NOx)と工場などから排出される揮発性有機化合物(VOC)が太陽の紫外線で光化学反応を起こし,この時生成された光化学オキシダント(オゾンを中心とする酸化性物質)や粒子が空中に停留したスモッグ状態を指します。スモッグとは,煙(smoke)と霧(fog)の合成語で,固体または液体の粒子が大気中に浮かんでいる状態を表します。この光化学反応により生成する粒子は,ほとんどがPM2.5の範囲に含まれており,ひどい場合には,空がかすんで見えることもあります。最近では,これら光化学スモッグの原因物質がアジア大陸から長距離輸送されてきているとの報告もあり,PM2.5と同様に注意が必要です。(埼玉大学・関口)

Q23. PM2.5と同じく中国から飛んでくる黄砂とはどう違うのですか?
A23. PM2.5は2.5μmより小さい粒子の総量で,燃焼に伴う黒煙や排気ガスから二次的に生成された微小な粒子を多く含みます。一方,黄砂は細かい砂(鉱物)粒子からなり,PM2.5に含まれる粒子より大きい粒子がほとんどです。黄砂は中国やモンゴルの乾燥地域の地面の砂が強風で直接舞い上がり,西風に乗って日本に運ばれてきます。すなわちPM2.5と黄砂はその発生源と組成が大きく異なります。ただ,黄砂を含む空気塊が東に移動するときには東シナ海沿岸部の中国の工業地域を通過してきますので,そこで発生しているPM2.5などの大気汚染物質を押し出したり,またはそれと混合したりしてわが国に到達します。(名古屋大学・柴田,東京農工大学・畠山)

VI. エアロゾル
Q24. エアロゾルはどんな分野に関わっていますか?
A24.  エアロゾル粒子に関する研究は,工業的には,有用な薬剤や医薬品の開発,農薬の開発,高機能ナノ粒子や新素材の開発など,主に化学プロセスにおける粉体の利用として研究が進められています。その一方で,大気環境や室内環境においては,自動車排気,タバコ煙,アスベスト,放射性粒子といった健康影響に関するもの,また,大気エアロゾルの物理的,化学的特徴を解明するための観測研究,病院や食品工場,クリーンルームといった製造環境における清浄空間の創出など,エアロゾルを対象とした研究はその重要性から多岐にわたっています。エアロゾルは様々な成分の混合物として存在し,その発生源や挙動は大きさによって大きく異なります。そのため,大気中におけるエアロゾルの挙動や人への影響を知るためには,粒子の大きさ別に特徴を把握し,濃度と基準値の関係を明らかにしていくことが重要となります。PM2.5の環境基準もこの大きさ別の概念から決定されたものです。(埼玉大学・関口)

Q25. エアロゾルの気候影響にはどのようなものがありますか?
A25. 気候変動というと地球温暖化に関連した二酸化炭素を思い浮かべる方も多いかと思いますが,PM2.5を含むエアロゾル粒子もまた,太陽光を散乱,吸収することで重要な要素の一つとなっています。放射収支の観点から見た場合,エアロゾル粒子により散乱されて,太陽放射を宇宙空間へ戻してしまう効果が大きいと大気系が冷却されることになります。逆に太陽放射や地表面・大気からの赤外放射を効率良く吸収すれば,大気を加熱することになります。これをエアロゾルの「直接効果」と呼びます。また,エアロゾル粒子は,水雲の核(雲凝結核)や氷雲の核(氷晶核)となり,生成される雲粒の大きさや個数濃度に影響を与えています。粒子の大きさや個数濃度の違いは,太陽放射や赤外放射に対する散乱・吸収特性の変化に寄与します。また,雲の寿命にも影響します。この効果を「間接効果」と呼んでいます。エアロゾルは主な温室効果気体と比べて寿命が短く,発生源も多種多様であることから,広域的なエアロゾル分布特性を把握することが難しく,将来の気候変動を正確に予測する際の不確定要素の一つとなっています。(京都大学・矢吹)

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